「あらしのよるに」(講談社)(東宝で映画化)の作者きむらゆういちさんが、「嫌な奴が人を育てる」と言っています。褒め言葉だけでは人は育たない。嫌な奴にこそ感謝。というわけです。

 医学部合格を目指して頑張っている受験生、君たちは家の内にいても外にいても常に叱咤激励され、「褒め言葉」よりも「嫌な言葉」を耳にする機会が多いと思います。

 そんな君たちに次の言葉を送ります。

『遠回り』

 学窓を離れて数年。将来の夢を語り合った友人に久しぶりに会うと、着々と自らの道を歩み、成長している姿がまぶしく見える。それに比べて自分ひとり後れをとり、取り残されたように感じられてくる。
夢や目標に向かって懸命に頑張っていても、なかなか芽が出ず、成果があがらない。そんなとき、誰しも、こんなことをしていていいのか、もしかするとこれまでの努力、経験は無駄だったのではないか、余計な遠回りをしているのではないかという不安や焦りに駆られるものである。
 だが、無駄なこと、意味のないことなど一つもない。自分にとって、それらはすべて必要なことなのである。夢を将来現実のものにするための、どうしても通らなくてはならない道のりなのである。振り返ってみて、あのときの努力や経験があってこそ、今の自分があるのだとわかる日が、きっと来るにちがいない。
 遠回りに思える道が、結局は一番の近道になる。安心つつ、”もう少し頑張っておけばよかった”という悔いだけは残さぬよう、一歩一歩、なすべきことをなし続けていきたい。 (PHP8月号から)