今日は和傘の修復や和傘作りに専心する和傘職人の竹澤幸代さんの話です。

 若い頃、人は多くの夢を抱きながら社会に出て行くものです。そしていつの日か挫折を味わうときもあります。竹澤さんも和傘と向き合うときには一心に傘のことを考えていましたが、学生時代の友人たちの会社の話、恋の話、結婚の話などを聞き、心に迷いが忍び込む日々がありました。このままでいいのか、自分に未来はあるのか、屈折を抱えこむことがあったようです。しかしいつかしら、和傘職人としての目標が見えるようになりました。「畳んだ時にスッキリと細くて美しい傘を作りたい」「幕末に流行った形を大きい傘で再現したい」と具体的に考えるようになりました。

 お花見やお茶席、お祭りなど日本の文化や暮らしに欠かせない和傘をよみがえらせ、忘れられてしまった美しさを改めて伝えていくことに竹澤さんは喜びを見出すことが出来るようになったようです。

 こんな竹澤さんの話を聞いていた生徒の一人が、自分も医者になるよりこういう生き方の方が向いているような気がする、と言い出し思わず失笑を買うことになりました。若いときはどんな道に進むことを決めたとしても心に迷いが忍び込むのは誰にでもあることです。それは進む道の困難が人にさせる技なのか、若さゆえの浮気な心がさせる技なのか、それとも他に理由があるのか知る由もありませんが、何はともあれ、決めた道を貫き通した後で、再度自分の心を振り返って見る方が良いように思います。

 竹澤さんもいろんな困難を乗り越え、今は和傘職人として生きる道に生き甲斐を感じるようになりました。「どの世界にいてもみんな迷ったり悩んだりしているんだと思うようになりました」と微笑み、「今まで受身でしたが、もっと表に出ようと考えています。外の世界には和傘がどう見えるのか知りたいし、店舗も充実させたいんです。海外からのお客さんもよく来られますから」と饒舌に楽しそうに話をしているようです。